足音






コツコツと硬い廊下に響くのはあたしの足音。

一歩遅れて、でもゆったりとしたリズムでついてくるのはガウリイの足音。

2人とも、足音なんて消そうと思えばできるんだけど
あえてそうしないだけだ。

まぁ、やってできなくないってだけで、必要もないのにそんな事をする
意味がないからだが。

「準備は?」

「いつでも大丈夫だ」

小声で簡潔な会話を交わす。

見取り図ではこの先の角を曲がった場所に隠し扉があるらしい。

そこを突破すれば、敵の頭と一戦交える事になる。

勝算は5分5分。

敵はかなり高位の魔族だから、楽に勝たせてはくれないだろう。

かつて、幾人もの人間が。

こんな風に、この廊下に足音を響かせたのだろうか。

そして、誰一人還らなかった・・・。





「帰る時も」

「ん? 何か言ったか?」

「・・・ううん。何も」

訝しげに声を掛けてきたガウリイにあいまいな返事を返す。

伝える必要はないだろう。

「帰る時にも、こうやってあんたの足音が聞きたい」だなんて。