動物と遊ぶ





『きゅいっ、きゅ〜い〜っ!』

ちょっとビニールをガサつかせただけでこの騒ぎだ。
毎度毎度、何て耳聡いんだろうと思いながら冷蔵庫の扉をバタムと閉めて、
あたしは騒音の発生源に近寄った。

『きゅいっ!! きゅぅいぃぃぃ〜っ!!』

トタパタと軽い足音が駆け回っている。
さっきの音を聞いて、すっかり興奮状態に陥ってるらしい。

「ほらほら、分かったからちょっとは落ち着きなさいってば」
金色の毛玉の前にしゃがこみこんで、手の中のサニーレタスをパリッと千切り。

ピタっと、毛玉の動きが止まった。

じ〜っと、つぶらな瞳があたしを見つめ・・・いや、見ているのはレタスの方?

「が〜うりい? ね、そんなにこれが好きなの?」

小さめの一枚を、『がうりい』の鼻先にぶら下げてやると、
さっそくすごい勢いで齧りついてくる。

「ほんと、あんたって食欲旺盛よね」

一心不乱にレタスをかじり続ける『がうりい』のおでこを軽く突付いてやると。

『きゅっ?』

『なぁに?』って顔であたしを見ながらも、彼の口は動いたまま。

「まったく、そんなとこまで似なくていいのに」

頭の中でイメージを並べて、つい笑ってしまった。

「笑わなくてもいいだろ?」

後ろから、もう一頭。

もとい、本当は呼び方が逆なのよね。
目の前のは一頭、背後のが一人。

「だって、夢中になって食べてる姿がそっくりなんだもの」
美味しそうに口いっぱいに頬張っちゃって。

「だいたい、そいつに名前をつけたのはオレじゃないんだぜ? 
生徒達が「先生と同じ色で同じ髪型だから、名前も同じがいい!!」
って、つけちまっただけなんだから。 
オレはもっと呼びやすい名前にしたかったんだが」

どっかりとあたしの横に座り込み、いつもの癖で頭に手をやってるのが
本物のガウリイ=ガブリエフ。
(もちろん人間)

そう、あたしの前でもしゃもしゃやっているのは、彼の勤務先の小学校で
飼われているモルモットの『がうりい』

休み中だけ世話の為にと同じ名前のガウリイが家に連れ帰っているのだ。

「いいじゃない、それだけ生徒に好かれてるって証拠じゃないの。ね?」

葉を食べ終えた『がうりい』を抱き上げて同意を求めてみたら、
『ぷしっ!!』って、大きなくしゃみを一つ。

「へくしっ!!」

ほぼ同時にガウリイまで大きなくしゃみを一つ。

「・・・お前もか?」

きょんとして顔を見合わせた一人と一頭が、妙に可愛らしくて
つい、あたしは笑ってしまって。

「じゃあ、こいつの嫁さんは「りな」って名前にしような。お前も名案と思うだろ?」

笑われた事への意趣返しなのか、悪戯っぽい笑みを浮かべた
ガウリイが『がうりい』に話しかけると。

『きゅいっ!!』

一際大きな声で『がうりい』が鳴いた。

「おお、そっか! お前もいいって思うか!!」

「馬鹿なこと言ってないで、さっさとケージの掃除しちゃってよね!」

馬鹿な話を続けながら、こうして2人と一頭はまったりした休日を過ごしたのである。