モルモットのいる生活。
(合同お題の「動物と遊ぶ」と同じ設定です)



「まったく。大抵のモルモットって、捕まえられそうになったら
反射的に逃げようとするのに。なんであんたはボーっとしてるのかしらね?」

しっかり腕の中に納まってから、ようやくモガモガ暴れ始める毛玉。

「ね、もうすぐおうちに帰っちゃうんでしょ?」

仄かに干草の匂いがする背中の、柔らかな毛並みにもっふり
顔を埋めてすぅはぁと深呼吸。

・・・ああ、何て癒されるんだろう。

触れ合った肌からはスピスピって息遣いと、
早鐘のような心臓の音が聞こえる。

もうすぐ長期休みも終了、学校が始まったらこの仔も学校に帰ってしまう。
そうしたらもう、こんな風には触れ合えない。
あたしは学校関係者じゃないから、仕方のない事ではあるのだけど。

「寂しくなっちゃうわね」

ツヤツヤの毛皮を撫でながら、そっとがうりいに額を押しつけると
『クン』と頭を持ち上げて、がうりいも軽く押し返してくれる。

「まったく、夏休みまで元気でやるのよ? 
あんまりおやつねだっちゃダメだからね?」

「きゅいっ!」

タイミングよく、『がうりい』からお返事をいただいてしまった。

たったの2週間一緒に過ごしただけなのに、
もう、しっかりと情が移ってしまっている。

くりくりした目と、長く滑らかな手触りの金色の体毛。

ずんぐりむっくりとしたボディの、可愛い可愛いモルモットの『がうりい』。

薄い耳がぴるぴると震えるのも、鼻をヒクヒクさせる仕草も、
始終モグモグ動いているおちょぼなお口も。

何もかもがチャーミングかつ、ぷりてぃ。



ぴんぽーん。

「おーい、リナー! 開けてくれ〜っ!!」

インターフォンが鳴ったと同時に、でっかい声が外から響いて。

驚いた『がうりい』がカチカチカチ・・・と歯を鳴らす。

「こらっ、ご主人様のお帰りでしょ? 
どーして毎回、威嚇音出すかなぁ」

落ち着かせようとがうりいの背中を撫でながら、
そのままあたしは玄関へと向かった。



「お帰りなさい」

「ただいま、リナ」

どうして自分で扉を開けないのかと思ってたら、一目見て納得。

「それ、どうしたの?」

「ん? こいつが喜ぶかと思ってなぁ」

片手に食料とおつまみ、もう片手には花の咲いていない鉢植え。
あたしが『それ』と言ったのはもちろん鉢植えの方。

「食べるの?」

「食べるんだとさ」

「きゅ〜っ!! きゅいっ! きゅいっ!!」

青々と茂った草に注目、三者三様に呟いた
タイミングのよさに、笑ってしまった。

「はいはい、じゃ、まずあんたのご飯の支度をしなきゃね」

腕の中の『がうりい』と鉢植えを交換して、あたしはケージの方へ。

「うおっ!?」

3歩進んだ所でガウリイの悲鳴が。

「り〜なぁ〜。それ置いたらタオル取ってくれ〜」

なんとも情けない声で、あたしに助けを求めてくる。

「また?」

「やられた。なんでこいつ、オレが抱いてる時だけ粗相するんだ?」

とりあえず鉢は床に置き、急いで専用のタオルを取りに走って。

「はい。先にシャワーも浴びちゃいなさいよ」

「すまん、こいつ頼むわ」

今度は『がうりい』とタオルを交換、その足でケージに戻す。

なんか、がうりいの表情が『やってやったぜ』って風に見えなくもない。

同じ名前なのに、どうも対抗意識を燃やしてるっぽいのがなんともはや。

人間の方はと言うと
「じっとり生温かい感触が、なんとも情けないんだよな〜」
などと零しながら、そろりそろりと浴室に消えていった。




男の子モルは単独飼いすると飼い主さんにベタ慣れする傾向があるそうです。
我が家のモルは女の子でしかも多頭飼いなので、
人間はあくまで『えさ係』扱いおよび
「時々いらんちょっかいかけるでかい生き物」
認定の模様・・・orz