「ガウリイ、どうしてそんなにとまどっているの?
こうなりたいって言ったのはあんたの方でしょ?」

あたしはベッドの上で足を組み替えながら、ドアの前で突っ立ったままのガウリイに言い放った。

「ねぇ・・・さっき言った言葉は嘘だったの?」
ペロリと下唇を一舐め。

『ゴクン』と、ガウリイの喉が鳴った。






さっき酒場で二人で飲んでいた時に、酔いに任せて
「あんたの睫毛長いわねv」って、
普段ならやらない位至近距離に近づいたあたしに
「リナ・・・そんな目で見られたら、抱きたくなっちまう」って囁いたガウリイ。

「なに冗談言ってるのよ・・・」

ワザと弱弱しく返したあたしに気を良くしたのか
珍しくも強引に肩をグイッと引き寄せて「オレの部屋に来ないか?」って。



それがほんの5分前の事。



扉を閉めて鍵を掛けて。

ガウリイは待ちきれなかったのか、性急にキスしようと顔を寄せてきたけど
あたしは人差し指でそれを制し。

「ねぇ、このあたしを何の言葉もなしに手に入れられると思ってるの?」
にっこりと、微笑んでやる。

「あ・・・」

ガウリイの中であたしは『純情で奥手なお嬢ちゃん』だと思われているんだろうけど。
そんなに甘く見ないで欲しいわね。

「お酒の勢いで告白もなしにあたしを手に入れようって言うの?」
トン、と胸を軽く突いて距離を取る。

「リナ・・・」

なによ、その顔。

このあたしが真っ赤になって俯いて「ガウリイ(///)」とでも言うって期待してたの?

あたしは欲しい物はどんな手を使っても手に入れる女なのに。

あんたがあたしを欲しがるように、あたしだってあんたを欲しかったのよ?

「ねぇ、このあたしが欲しいのなら。
気の利いた口説き文句ぐらい言ってみなさいよ。そしたらあたし・・・」

ゆっくりとベッドの上に腰を掛け。

あたしを凝視したままのガウリイを見つめる。



本気であたしが欲しいのなら、言って御覧なさいよ。

世界で一番の口説き文句。

あんたがあたしだけに捧げる愛の言葉。

陳腐なセリフじゃだめなのよ?

この、世界最強美少女魔道士たるあたしを手に入れたいのならば、必死になって考えて?



「リナ、愛してる」

「ダメよ、そんなありふれたのじゃ」

「お前が欲しいんだ」

「全然ダメ」

「どうすりゃいいんだよ・・・」

そんな途方にくれたような顔しないの。

本気になったあんたにあたしの力じゃ叶いっこないのに、あくまで許しを得ようとする
そんなあんたが少しだけ・・・あたしの嗜虐心をくすぐるのよ?

「ほら、もっともっとあたしの事を考えなさいよ。そしたら自然と言葉になって浮かんでくるはずよ?」

『今、ガウリイの頭の中は完全にあたし一色で染め上げられている』
そう考えるだけで、あたしは押し寄せる快感にゾクゾクしてしまう。

ねぇ、ガウリイ?

もっと、もっとあたしだけを見て。

ゆっくりと、髪を掻き上げて。

不敵に微笑んでみる。

少しだけくつろげた胸元に、食い入るように感じるガウリイの視線。

少しずつ、でも、確実に熱く、荒くなっていく吐息。

自分のシャツをギュッと握り締める、力の込められた拳も。

それこそが総てあたしに捧げられた『声無き言葉』なのにね?



さあ、早く気がついて?

あんたが欲しい物は、手を伸ばせば届く事に。



「LEMET」春日野空様よりいただきました。