使い魔ガウリイとヴァンパイアリナさん







『クルルルル・・・』
腹減った。

深い眠りから目覚めて最初に感じたのは空腹感。

昨夜は遅くまで仕事に借り出されて、ろくろく飯にありつけなかったからなぁ・・・。

のそりと、床に直置きされた木箱製のベッドから起き出して、
ここまで流れてきている良い匂いに釣られるまま部屋から移動する。

半分開いたままのドアをくぐり、小柄な背中に飛びついて朝の挨拶。

「リナ、腹へったvvv」

す〜りす〜りと白い首筋に顔を寄せたら『べしぃっ!!』
スリッパでどつかれた(涙)。

「あんたね、おはよう言う前に何やってるのよ!!」

こめかみをピクピクさせながら怒るリナに一瞬ひるみながらも
「昨日頑張ったら褒美くれるっていったろ!」
言いながら、更に密着度合いを高めつつ滑らかな頬にもスリスリしていたら。

「やめいって言ってるでしょうが!!」って、頭に『すぺぺぺぺ』ってスリッパ連打された。

これ以上怒らせたくないから仕方なく身体を離した俺の方を、
クルッと振り返ったリナは白いエプロンをつけて、何やらボールの中身を
木べらでグリグリかき混ぜていて。

「・・・・・」

オレの方を振り向いてからは、何故か止まってしまった手の動きと、
引きつった形のままの唇と一緒に
『ギギギ・・・』って音が聞こえそうな動きを見せつつ、
紅い瞳はオレの頭の先から足の方へとゆっくりと視線を落としていき・・・。



「ガウリイっ、なんて格好してるのよ!!」
いきなりでっかい声で叫ばれた。



「へっ!?格好って・・・???」

オレは起きてきたまんまでここまで来て・・・。

・・・・・・・。

って、事は。



「だから、素っ裸でこっちに来るんじゃないって毎度言ってるでしょうが〜っ!!」

顔を真っ赤にしながら悲鳴を上げるリナに追い立てられて、
オレは慌てて自分の部屋に戻った。

オレはリナの使い魔だから、リナの使い勝手が良い様に
いろんなものに姿を変える。
昨日はそれが狼の姿だったので、木箱製ベッドで丸くなって
寝ちまっただけなのに。んで、狼は服なんか着ないし、
つい忘れたって。

「んなこと言ったって、腹減ってたんだからしょうがないだろ・・」

クロゼットの中からシャツとズボンを取り出してさっさと着替えて、食堂に戻る。

「ガウリイ、こんどやったらお仕置きだって言ってたわよねぇ?」

扉の向こうからリナの不機嫌を隠さない声が。

「お、怒ってるか?」




恐々中に入ったオレを待っていたのは。






「さ〜てと。約束どおりこれ、全部食べてもらいますからね♪」

テーブルの上狭しと並べられて、俺に食べられる時を今か今かと待っている、
ほぼ緑一色の『ピーマンフルコース』

「い、一体いつの間にこんなモンを・・・」

リナは絶句状態から何とか回復したオレに甲斐甲斐しく前掛けをつけ、
椅子に座らせ手にナイフとフォークを握らせつつ
「んふふふふ、前から準備してあったのよ〜。
なんてったってあたしの美味しい食事の為ですからね♪ このピーマンははるばる
ジョージの店から取り寄せたんだから、心して食べなさいよ!!」
どこか嬉しげに、いや、心底嬉しいのだろう微笑を浮かべながら
目の前に緑一色の皿をコトリと置いて。

「×○%&#”$#・・・」

・・・皿の中身は、千切りにされてもまだ動いている。

「・・・・・リナ、どうしても食べなきゃダメか?」
ゴクリ、とつばを飲み込みながらオレは一縷の望みをかけて頼んでみた、が。

「だ・め・v」返って来たのは無情の響き。

「さあ、約束破ったんだから全部食べるまでご褒美はお預けよ♪」
心底嬉しげなリナの声がいっそ恨めしく。

それでもリナからの『ご褒美』への誘惑には抗えず。

ご褒美欲しさに半日かけて、何度か気が遠くなりながらも
総ての料理を食べ終えたあと。

「ご馳走様でした♪」
ギリギリラインまで血を吸い取られてご褒美所じゃなくなってしまい、
ベッドに沈まされた情けないオレと。

久しぶりの満腹にすっかり機嫌を直して、盗賊イビリに出かけるリナがいた。