リナの機嫌が悪い。
ガウリイはそう感じ取り、背を流れる汗を感じた。


『乙女心とストロベリーキス』


どうしたのだろうか、と考える。
そうっと振り返ると、後ろを振り返れば、アメリアと
ゼルガディスもわけがわかっていない様子。
いよいよもって、リナの機嫌を直すには骨が折れそうだとガウリイは確信。

「…どうしたものかな…っと…」

ふと、露店のあるものが目に入る。

それは、可愛らしい包み紙に包まれたイチゴのチョコレートで…

「ゼル、アメリア、先に行っていてくれないか?」
「あー…はい」
「しかし、ガウリイ大丈夫なのか?リナは…」
「まぁ、何とかやってみる。あの先の飯屋で待っていてくれ」

笑うリナの自称保護者に、アメリアとゼルガディスは顔を見合わせると
「じゃあ、お願いしますね」「何かあっても骨くらいは拾ってやるからな」と、
実に温かい(……)言葉を投げかけて、
ふたりはガウリイが指定した飯屋へ歩き始めた。

「りーな…」
「何よ、ガウリ…」

ぽん、と口の中に放り込まれた甘いもの。

「…いちご…?」
「ああ、さっきの露天で売っていたんだよ」
「あ、ゼリーが入ってる。」
「変わっているよなぁ…ほら、こっちはビスケットだってよ。」

ごくりと飲み込んだ所に、ガウリイが新しいチョコレートをリナの口に入れる。

サクッという音がして、軽い食感と香ばしいビスケットの味が、
口いっぱいに広がる。

「あ、おいしい…」

思わず出た呟きに、ガウリイは確信。
リナの機嫌が戻るまで、あともう一歩。

「そうか…あと、もう一種類あってな…」

それは、本当に一瞬の事で…

「もう一種…んっ…」

ガウリイがリナに口付ける。
それと同時に、口の中に入れていたそれを噛み砕き、
舌先でリナの口の中へと押し込む。

広がったのは、いちごと…それと同じくらい甘い練乳。
三種類のチョコの中で最も甘いそれと、ほんの短い時間での、深いキス。

甘い。

あっという間に離れていったガウリイの唇は、
口の中で消えた練乳のようで…

そこまで考えたリナは、顔を真っ赤にして嬉しそうに笑う
ガウリイを捕まえようとする。

「こら!ガウリイ!人前でっ…!」
「やー、美味しかったなぁ、リナ!
「このクラゲ〜!」

この甘いキスで、リナの怒る理由が先ほどの
「ガウリイを見る女性達の熱い視線」と「リナを値踏みする視線」
ではなくなり…ガウリイからのキスについては、
昼ご飯驕りで機嫌は直ったらしい。

因みに、残り6個あったチョコは、翌朝にはなくなっていたらしい。
どのようになくなったか…それは…
深夜、ふたりを見守っていた月だけが知っている。




葉月様が拙日記のチ○ルネタを発展させて
甘い苺チ○ルSSを送って下さいました♪
こんなに美味しいお話を独り占めするのは罪!!ということで
お願いしてサイトへの作品掲載許可をいただきました♪

葉月様、本当にありがとうございました!!