「ほーっほっほっほ!やっと見つけたわよ、岩の人!!」
「岩……」
突如ゼルガディスの前に現れたのは、長い黒髪に切れ長の瞳、スラリとした長身の美女だった。
しかしトゲトゲ付きのショルダーガードとドクロのネックレス、申し訳程度に体を覆う服らしき布きれーー要はひと昔前の悪の魔道士ルックのせいで、色気よりも怖気を感じさせる。
そんな女が気の触れた高笑いを上げつつ話し掛けてきたものだから、ゼルガディスはすぐさま見て見ぬふりを敢行した。
そしてそのままスタスタと、競歩並みの速さで歩み去る。
「ちょっ……!待ちなさいよ、岩の人!!」
スタスタスタッ!
「岩の人ー!!」
スタタタタッ!
「いぃぃぃわぁぁぁぁぁ!!」
「やかましい!」
叫びだした女に、ついにゼルガディスはキレた。
「さっきから岩岩やかましいぞ!いったいあんたは何なんだ!!」
「ほーっほっほっほ!わたしはナーガ!白蛇のナーガよ!!」
「別に名前は聞いてないが……」
「ほーっほっほっほ!あなた、あのリナ=インバースにひどい扱いを受けてるそうね!!」
「何!?」
ゼルガディスの仲間であるリナの名前が出てきたのも驚きだが、その彼女にひどい扱いを受けていることも指摘され、いつもは冷静なゼルガディスも少なからず動揺する。
「便利なアイテム扱いされたり、漬け物石にされかけたり。この前は人間ダーツにされたそうじゃない」
「なぜそれを……」
人間を矢に見立てて飛ばすという悪魔の如き所行により、心なしか薄くなったような気がしなくもない頭頂部を気にしつつ、ゼルガディスは問うた。
「ふっ。突然現れたおかっぱ糸目男が教えてくれたわ」
「くっ……ゼロスめ」
「わたしも散々リナにひどい扱いされたけど、あなたほどではなかったわよ。よっぽど運が悪いのね」
「……だろうな」
「でも安心することね!不幸の元凶リナを今日倒すことにしたから!!」
「リナを……倒すだと!?」
「そうよ。昨夜、マックスさんちの犬小屋で寝ている時に思い出したのよ。そういえばわたしはリナの最大最強にして、最後のライバルだったってことに!だからリナを倒すのよ!ほーっほっほっほ!!」
「…………」
どこからツッコミ入れようかとゼルガディスが悩んでいると、
「というわけで岩の人!わたしに付いてきなさい!!」
ナーガはとんでもない要求をしてきた。
「なぜ俺が」
「リナの最大の被害者として、リナが倒される瞬間を見せてあげるわ」