一日の終わりに、いつもの交差点でガウリイと立ち話。

朝からずっと一緒に授業を受けたりお昼を食べたり部室でお昼寝したりして、
ずっと一緒にいたはずなのに、なぜか別れの時は寂しくなってつい
「もうちょっとだけ」って引き止めあって。
缶コーヒーとミルクティー片手に身を寄せ合う。

話の内容なんて、あってないようなものばかり。

どこの家のハムスターが子供を産んだとか、
新しく出来たコンビニはお菓子の品揃えがいいとか
結局スーパーバーガーは一度しか食べられなかったとか。

ほぼ毎日一緒にいるのに、ガウリイといるとすごく楽しいのはどうしてだろう。

アメリアの紹介で知り合ってから3年経つけど、こんな風に自然に付き合える奴なんて
他にはきっといないだろうって位には、あたし達はいいコンビだと思う。

「ねぇ、ガウリイは今日いくつ貰ったの?」わざと「何を」とは聞かない。

聞かなくっても判るでしょう?

「ん〜? 貰うって・・・。ああ、チョコか! 
今年はリナの好きな「猫の舌」チョコも貰ってるから
あとで分けてやるぞ? 
「ゴディワ」と「P/Pくま〜」と「C・クラシック」の生チョコも貰ったんだ。
だからな、今日は家に寄らないか?」

ガサリと紙袋の中身を見せてくれながら笑うガウリイは、
純粋にお菓子を貰った事を喜んでる。

あ〜あ。せっかく本命用にって気合入れてただろう面々は、
天然くらげに騙されちゃってるし。

顔も知らぬ彼女達にちょっぴり同情もするけれど、それはそれ。
ガウリイの物はあたしの物、プレゼントに罪はない。

「今日はちょっと用があるから無理」

断りを口にしたら、途端にしょげた顔になる大男。

「だから、明日寄らせてもらうわね♪」って言った途端に、
パァッ!と表情が一変しちゃうし、
こいつは本当に成人式過ぎた大人だって自覚あるのかしらね?






じゃあ、そろそろ行くわとガウリイに背を向けて。

「あっ、これあんたにあげるわ」

振り返って、でっかい手の上に。
コートの下に隠してたものをポンと乗せて。

「んじゃね〜♪」って手をヒラヒラさせて、真っ直ぐ家路を急ぐ。

ガウリイは気が付くかしら?






「うあ、これ「金の天使」がついてるぞ!?」

背中にぶつかるガウリイの叫び声に、あたしはにんまり笑いを堪えきれない。






知り合って3年目にして、ガウリイに初めて渡したチョコレートは。

金なら1枚、銀なら5枚。

大人から子供まで、誰でも知ってるショコラ・ボール。
(税別55円、スィーフィードスーパーにて)

好きって気持ちを伝える代わりに、あたしのラッキーを分けてあげる♪

こんなに破格な待遇は、世界中探したってガウリイ。あんたにだけなのよ?

慌てた調子で追いかけてくる足音から逃げながら、
あたしはしてやったりと笑ったのだった。